大阪のライブハウスESAKA MUSEが地元バンド3組と回る東名阪ツアー「HOKUSETSU POPS WAVE」のツアーファイナルが3月7日に開催された。
2022年から始めた「HOKUSETSU NEW WAVE」というブッキングイベントから、今回派生してポップスを軸にESAKA MUSEによく出演しており育ってきた「DAYBAG」「yummy’g」「kohamo」の3バンドを引き連れて行われたツアー。2月27日東京、2月28日名古屋と各所ゲストも迎えて行ってきた。そして地元ESAKA MUSEに戻り、ニューアヤカとロアの音返しをゲストに迎えたツアーファイナルの様子をレポートする。
①DAYBAG
トッパーを務めたのはDAYBAG。軽やかで思わずクラップしてしまうSEと、登場したメンバーの色とりどりで華やかな衣装は早くも良質なPOPSへの機運を高める。そこから瑞々しいイントロが鳴り出し『アイリス』からスタート。曲が進むたびに寒さどころか桜まで吹き飛ばして、初夏の気持ちいい爽快な風を送り込む。その爽快さは北村宇翔(Gt)のクリアなギターメロディに小谷日菜子(Key)のキラキラとした鮮やかなキーボードの音が乗っかって生まれている。かき氷みたいだ。そのままノンストップで『快速急行』へ。リズミカルなメロディに木村宗風(Vo.Gt)の進むごとに熱を帯びていくボーカルでワクワクが加速していく感じが、今度は一気に休日のショッピングモールに来た気分にしてくれる。この日は金曜日。楽しい連休が一足先にこの曲から始まった。そして木村がピンボーカルとなり、歌い出しからフッと大人な雰囲気を醸し出した『TOO』へ。谷口仁(Ba)の優しく鳴るベースがエモーショナルな木村のボーカルと言葉の力を引き立て、<何気ない1日が春色に染まる>という歌詞で、また季節の情景を変えてくれた。
shoogo(Sup.Dr)のドラムが鳴る中MCに入り、木村が「ESAKA MUSE調子どうですかー?」と聞くと明るく反応するフロア。「今日は素敵な夜になりそうな予感がするので最後までよろしくお願いします」と話した後、『ぼうけんのしょ』へ。ノーストレスなサウンドと木村の心地よいフロウからの「手挙げれますか!」の合図でサビでは多くのハンズアップが起こる。木村もテンション上がってるのか、途中ギターを弾いている北村に接近しすぎる。混ざりたそうな小谷。
再びMCに入り木村が改めてツアーの趣旨を説明し「いろんなことがあった」と話しつつも、「ものすごく大事な旅になった」「一緒に回った2バンドとの絆も芽生えたし、良いところもすごく見えたし、その魅力を精一杯伝えるために帰ってきたと言っても過言じゃないので、最後まで楽しんで帰ってください」と伝えると拍手が起こる。そして力強いドラムから『Second』へ。終始クラップも巻き起こり、kohamoの三浦(Vo)もノリノリで踊っていた。そして間奏で今度は北村と谷口がセンターで木村を挟むように密集して3人で演奏。混ざりたそうな小谷。そしてラスサビはたしかにこのツアーでタフさが増したことを思わせるような力強さで、それにフロアも拳で応えていた。ラストは疾走感のある『another』。5ピースだからこそ生まれるカラフルさも強さも最後まで失わず、北村のギターソロも決まった。これからの未来を切り開く予感を十分に与えて終了した。
彼らのロックから生まれるPOPは様々な景色や季節にトリップさせてくれた。その景色に実際に足を運ぶ時はDAYBAGの音楽もバッグに入れておくと楽しさを増すことを約束します。
<セットリスト>
1.アイリス
2.快速急行
3.TOO
4.ぼうけんのしょ
5.Second
6.another
<注目ライブ情報>
DAYBAG pre.
1st mini Album “Focus” Release tour
『GreenCheese』
2025.3.19
下北沢MOSAiC
https://tiget.net/events/372812
2025.3.29
LIVE SQUARE 2nd LINE
https://tiget.net/events/372809
②ニューアヤカ
SEはミュージカルのよう。サポートメンバーの装いもそこに合わせているのだろう。そして満を持して登場したニューアヤカもしっかり主役の華やかさがある。
1曲目はこの日の2日前に発売されたアルバム「ニュー」にも収録され、MVも公開された『しらんぷり』。伸びやかな歌声を響かせ、サビでは手を横に振るフロア。すぐにでもドラマ主題歌になりそうな雰囲気を持っているからか、どこかTVで見ているアットホーム感もある。そこから『Know what I mean?』へに繋ぐが藤村佑樹(Sup.Gt)のギターの残響が残りながらの繋ぎが実にオシャレだった。この曲は物憂げさもある曲だが、会場でのクラップが混ざると多幸感が生まれるのが、やはりライブの良さ。あとさっきは知らんぷりすると歌ってたのに、今度は<君が隣にいると全部がご褒美だったよ>と歌うのはツンデレすぎる。
MCでは最終日に呼んでもらえたことを感謝し、「最新アルバムの曲をいっぱいやります!」と元気よく宣言し『OAO』へ。力強いサウンドに乗って、ESAKA MUSEのステージをより広く使うニューアヤカ。広いフロアでも近くで歌ってくれる感覚になる。続く『ハナツネガイ』はここまでの真っ直ぐなサウンドと比べると、良い意味で散らばって弾けた感じがあって、カラフルさが増している。ケケ(Sup.Ba)、田中智裕(Sup.Dr)のリズム隊の技術の高さも感じた。
2度目のMCでもアルバムリリースの喜びと、リリースして一発目のライブという嬉しさ、加えて最近の喉の不調も無くなって歌える喜びと、いろいろな幸せが溢れていて「皆様も幸せにして帰りますので、よろしくお願いします!」と伝えた。そして「帰り道に聴いてほしい曲です」とバラードナンバー『帰り道』を演奏。スタンドマイクで歌う彼女を帰り道を照らす夕暮れのようなオレンジの照明が照らす。それを揺れたり、頷いたりしながらフロアは聴いていた。そして最後は明るく『どんなに愛しても』で、体力尽きることなくハッピーにたくさんの愛をばら撒いてライブは終了した。
どこまでも自分の足でストレートに愛と喜びを歌で伝えていくポップなエンターテイナー・ニューアヤカを覚えて帰ってください。ゴーゴーニューアヤカ。
<セットリスト>
1.しらんぷり
2.Know what I mean?
3.OAO
4.ハナツネガイ
5.帰り道
6.どんなに愛しても
<注目ライブ情報>
ニューアヤカ初の東名阪ツアー
【READY POP LADY vol.5】
4/10(木)東京渋谷eggman
https://tiget.net/events/379360
4/11(金)名古屋吹上鑪ら場
取り置き
4/18(金)大阪ESAKA MUSE
https://eplus.jp/sf/detail/4268500001-P0030001
③yummy’g
サウンドチェックからパワフルな音を響かせたスリーピースインディーロックガールズバンド・yummy’g。本編が始まっても変わらず、思わず聴いていて痺れるようなサウンドの『Monster』からスタート。加えてASUKA(Vo.Gt)とARISA(Ba.Cho)も前に出て演奏して積極的に音を届ける。その音像はたしかに重くてでかい怪獣を生み出す。余所見してたらそれに潰されそうだからステージを見る目は離せない。終わるとすぐARISAが圧力のあるベースを響かせ『boooom』へ。日本語詞と英詞が絶妙にミックスされた歌詞と、3人の息の合った演奏を見せる。続けて、とも(Dr)のドラムの繋ぎからハードなギターが鳴り響き『unbalance』へ。サイレンのような赤の照明が曲の鋭利感を高めながらも、サビには<Hey!Hey!>という掛け声もあり、会場のグルーヴはさらに高まっていた。
MCではともがこのツアーを通して「ただ一緒にライブするんじゃなくて、ツアーの対バンの意味が分かった」と収穫を話す。名古屋でkohamoと一緒に矢場とん本店に行った話を挟み「仲良くなって3組のグルーヴも高まったと思うので、その中で一番良いライブができるように頑張ります」と伝え、ASUKAが切り裂くようなギターを鳴らし『I am』へ。焦燥感のあるビートがどんどん出てくる曲だが、不思議とずっとついていけるのは、既にこの前半戦でyummy’gのリズムに病みつきになっていたからだろう。サビ前のともがシンバルを”チン”と鳴らす音が心地よい。
次の『switch』はゆったりとしたリズムに。大切にエモーショナルに届けるボーカルやコーラスの空気の含有量も増えて、柔らかい感じや浮遊感もあり、先ほどまでのショック性のある楽曲とのメリハリにまたハートは強く掴まれる。
最後にASUKAが感謝を伝え「またここでお会いしましょう」から『charge!!』へ。活動当初から彼女達の代名詞となっているナンバーだけあって、フロアの雰囲気もまた一段と明るくなる。そこに「ESAKAいけますか!」と煽ったりもするもんだから、会場のノリも最高潮に持っていって終了となった。
随所に3人のコンビネーションの高さを感じた30分は、ここまでの2組のPOPのキラキラとした感じとはまた違った、ハートにエネルギーを過充電させて弾ませさせるオリジナリティのあるPOPを提供してくれた。
<セットリスト>
1.Monster
2.boooom
3.unbalance
4.I am
5.switch
6.charge!!
<注目ライブ情報>
2025.04.07
LIVE SQUARE 2nd LINE
“フロムライブハウス by 2nd LINE”
w/
Mercy Woodopecker
終活クラブ
cherie
開場18:00/開演18:30
前売¥2,500/当日¥3,000
https://eplus.jp/sf/detail/4280580001-P0030001
④ロアの音返し
そのメルヘンなSEは一気にファンタジーの世界へ連れていく。そしてステージの幕が開くとナレーションがロアの音返しのステージの始まりを告げ、『サンタと魔女』からスタート。上田拓人(Vo.Gt)とユリナ(Ba.Vo)の男女ツインボーカル、しん(Dr.Cho)の繊細なドラム、ここに会場のクラップ、そしてバンドサウンドだけでなく、ベルなど様々なサウンドを駆使して、独自の音楽を聴かせていく。
続けて、しんのドラムから一転澄んだ夜空を広げさせた『満月トリップ』へ。歌だけでなく、上田の歌詞に合わせた指の動きやアクションも、アニメーションが見えるような曲の世界観に没入させていってくれる。
キラキラとした2曲が続いたが、今度は恐ろしい鳴き声とアラーム音。そして「恐竜の目撃情報がありました。皆様は直ちに今いる位置より前にお進みください」とナレーションが。このお客さんをステージに近付けるアイディアは思いつかなかった。そこから『ジュラシックボーイ』へ。ツインボーカルには先程とは違った色気があり、サビの<わーおわーお>という歌詞も耳に残る。そしてまたカラフルなメロディが始まり『シークレットダンス』へ。サビではミラーボールも回り、オーディエンスも煌めくフロアの中でリズムを取っていた。終盤はしんも立ち上がってクラップを要求。上田とユリナも交互に前に出て、最後まで楽しい世界観を切らさなかった。
ステージ上はマイクスタンドにも装飾がされていたり、アンプの上にランタンや人形があったりと世界観に隙がない。この日は4曲17分と他の出演者より短めだったが、今度はぜひ長編作品も見たいところ。
<セットリスト>
1.サンタと魔女
2.満月トリップ
3.ジュラシックボーイ
4.シークレットダンス
<注目ライブ情報>
ReG 15th & Wake me up !!! 10th ANNIVERSARY SERIES
『Vermilion』vol.2
2025.04.17
OPEN 18:00 START 18:30
下北沢ReG
ADV ¥2,400 +1D
ロアの音返し
リーベレイク
ANOMA
Aivy
小林カナ(プルスタンス)
https://tiget.net/events/378334
⑤kohamo
トリを務めるのはkohamo。関西の若手全体を見ても”新進気鋭”という表現が似合う彼らはサポートドラム(このツアーはChim ChapのDoiren)を迎えた5人編成。
三浦海輝(Vo)が静かに「kohamo始めます」と伝え、『Tetris』からスタート。静と動のコントラストのあるバンドサウンドが刹那的な感情を与える。曲が終わるやいなや初MV曲の印象的なイントロが鳴り出し、三浦の「amusement parkへ一緒に行こう」という合図から『amusement park』へ。
サビでは何度も三浦がセンターのお立ち台に上がり「来い!」と煽り、フロアの拳を上げさせる。そんなカリスマ性のある三浦のステージングは当然の如く、ただこの日はキノセ(Gt)、森本奏音(Gt.Cho)、中森楓(Ba.Cho)も私が何度も見てきた中でも一番熱のある演奏とコーラスで目の離せない空間を作り上げる。この熱の余韻に浸らせる間も無く『tritone』が始まる。MVに出てきた深い森が見えるような奥深くミステリアスなサウンドとその歌のメッセージからは、何かしらのサイコキネシスがあって、心に絡み付く鎖をパンクロックがパワーで引き千切ってくれるのであれば、この曲は急速に錆び付かせるような力がある。kohamoのやり方できっちりと解放感を与えられたフロアはクラップする者もいれば、手を振る者もいる、拳を上げる者もいて、たしかに自由になっていた。
今度はバラード曲の『strobo』へ。重いサウンドから次第に軽快なサウンドに変わるが深みは消えないのはリズム隊の実力。キノセと森本の両サイドのツインギターも異なる熱を放出。曲が終わり切る前に拍手が起こるほど感動を与えていた。続く『focus』はここまでの幻想的な楽曲と比べれば肉体的なサウンド。三浦はパワフルに乗りこなして、しっかりとフロア1人1人の背中を押すような時間となっていた。
5曲をノンストップで駆け抜けてここで初MC。三浦はツアー大阪編のトリを任されたことに感謝。そして4月に発売される2nd EPから『キラキラのわたし』を披露。ダンスミュージックな要素が付加されたサウンドが瞬く間にフロアに充満する。
三浦の声色も巧みで、初めて聴く人でもしっかり”アガる”曲となっていた。春のサーキットで彼らを見てみようと思っている人は期待してもらっていい。そしてラストは最新リリース曲『How to』。スタートからフロアは高い位置で手拍子が鳴り響かせる。2段階と言っていいサビは高い推進力を持ち、森本のギターソロも炸裂して感情の高揚は止まらない。そしていつもの如く、三浦が颯爽と去り、本編は終了した。
フロアから要求されたアンコールにも登場。多くの人が集まってくれたことに感謝し、最後に「幸せな気分になって帰りましょう」という言葉から『生活』をプレイ。優しさもある疾走感のあるギターロックは今そこにいる”あなた”を讃える。あとは何より三浦、キノセ、森本、中森が横一線に並んでの演奏から非常に高い充実感が伝わってきて、暖かい気持ちにもなった。最後に「HOKUSETSU POPS WAVEありがとうございました」と伝え、ツアーファイナルが終了した。
個人的にも昨年年始にESAKA MUSEでの初ライブを見て衝撃を受けたバンドが1年と少しで高い注目度を浴びるバンドとなって、この日同じ場所で見れたことが嬉しい。ただまだまだ止まらない。北摂が生んだクリエイティブなPOPはさらに広がりを見せるはずだ。
<セットリスト>
1.Tetris
2.amusement park
3.tritone
4.strobo
5.focus
6.キラキラのわたし
7.How to
En.生活
<注目ライブ情報>
kohamo presents 「Actor’s」
東京編
5/29 (木)
下北沢SHELTER
学生¥2000 / 一般¥3300
https://t.livepocket.jp/e/uo3a9
大阪編
6/1(日)
心斎橋Pangea
学生¥2000/一般¥3300
https://tiget.net/events/381709
ゲストの2組も合わせて、各々のPOPSを感じ取れた日になった。
キラキラと風景を変えるのもあれば、エネルギーを与えまくって弾けるのだってPOPS。無駄を削ぎ落として創り上げたものこそPOPSという考えもあれば、あえて泥臭さを見せるPOPSもある。
そこに答えはない。だがその己がPOPSをこれからもライブハウスでぶつけ合って波動を起こし、求める全ての人の耳に届いてほしい。内なるPOPSぶつける場所を探してるというあなた、ESAKA MUSEがいつでも待っているぞ。
ライター:遊津場(X):https://x.com/sakidori_yutuba
(Instagram):https://www.instagram.com/sakidoriyutsuba/
カメラマン:サカモト ツバサ(X):https://x.com/basser777_photo
(Instagram):https://www.instagram.com/basser777_photo?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA%3D%3D