【ライブレポート】Lambirisの1st EPリリースイベントに密着&第2章開幕の報告

4月14日にLambirisの1st EPリリースイベント『蛍が描いた夜のこと』が、心斎橋AtlantiQsで開催された。この日までLambirisは黒崎灯。(Vo.Gt)とサクラギミズ(Dr)に、サポートベースを加えた編成で活動してきたが、この日でサクラギがバンドを卒業することを2月に発表している。

つまりこれ「正規メンバー1人になるバンドになった」と見られてしまうんですよね(その後新体制を発表してます)。

僕はイベントのブッキングも何度かしていますが、正直、正規メンバーが明らかに足りないバンドは、「サポートメンバーの都合つけられるのかな」「あんまり活動に勢いがないのかな」そう見えてブッキング候補ランクは下げざるを得ません。特にLambirisは初MVの『少しだけ』が2万再生超えているので、より”あそこがピーク感”が出ちゃうんですよね。

しかし本人達(これはLambirisだけでなく多くのバンドに言える)からしたら、「今の私達を見てもらいたい」という乖離。
これは僕も常々先取りをしている分、そこを広めてあげるべきだよなと思います。

ま、それでも「こりゃダメだな」と思うようなライブだったら、当たり障りのないライブレポにしようかと思ったんですけど、全然いろんなライブハウスに立ってる姿がこれからも想像できるバンドでした。そして何よりなんですが、今までは出演できる曜日に指定があったのですが、この新体制からはどの曜日にも出演可とのことです。

4月15日からの新体制はギターにTatsuyaが正式加入し、4ピース体制となります。ベースとドラムはサポートですが、協力もあってフットワークは軽くなったとのことでした。でも一番大事なのは音楽。
それはこれからのライブレポを通じて、お伝えできればと思います。

「出演者それぞれの節目が重なった日」

というAtlantiQs店長の鈴木氏のポストもあったが、実は1番手のアイムも、この日を持ってドラムのちゃっちーが脱退し、正規メンバーはまりの(Vo.Gt)1人に。
4番手のthe Kaisに関してはこの日で解散。5バンド中3バンドが何かしらの最終章。
そこを託されるLambiris。どのバンドのライブも、しっかり見届けるメンバーが印象的だった。

①アイム

そんな1番手のアイムは「他のバンドと系統違いますけど盛り上げます!」と、まりのが宣言した通り、この日の出演者の中ではPOPなギターロック色の強いバンド。出演前はリラックスしていた2人だったが、1曲目『リボン』の「ワンツー!」の入りから、気合全開。

暖色系の照明が似合う、力強いPOPが次々と放たれていったが、歌詞や表情を見ると、天真爛漫だけではない泥臭い汗や悔しさも詰まったステージであり、その本気さに呼応するように『ぽっきり人生』では手拍子が、『ワールドキャンセリング』では力強い拳が、フロアから生まれた。

いろんな感情や景色を歌にするアンテナが強い印象を持ったこのバンドは「愛と夢を歌う」ということをテーマに掲げる。
アイムも活動は止めないとのこと。宣言通り盛り上げ、その後号泣した様子で黒崎と抱きついていたラストライブのちゃっちー。
アイムから熱いバトンが繋がった。

②凛黎

じゃあどれだけ系統違うねんと思っていたが、明らかに雰囲気が違う荘厳なSEが流れる。現れたメンバーは基本的に表情がはっきりとは見えないくらいの逆光の中、ニューエイジ・ミュージックと冠する彼らのライブが始まる。ハードで重いバンドサウンドに同期を重ねたサウンドは、ダークさ、メルヘンさ、ホラーさ、神々しさがあり、大作ファンタジー洋画のような世界観に誘う。

全6曲の中でも1つ1つのシーンの物語が見える豊かな表現力があり、それを遂行するバンドメンバーの演奏力と、にじほ(Vo)の堂々としたボーカルの見応えはすごく、30分はあっという間だった。

正直こういう曲自体にきっちり物語性のあるバンドは今のトレンドだと思うし、このバンドはライブでもしっかり魅せられるだけの実力があったので即戦力になれる。普通に気付かれるべき。

③Poecity

3番手のPoecityも救いのないような感覚にさせるSEで登場。なるほど、こういう系統の日なのね今日。1曲目の『悲観的細胞』の疾走感のあるメロディ、2曲目『思念体EX』のシャウトも含むダウナーな破壊力はアングラな魅力が満載で、これぞ地下のライブハウスのカッコ良さと思わせてくれる。

2曲終えた時点で智也(Vo.Ba)は息切れしながらも「全力を捧げる」と、ほぼノンストップで焦燥や後悔といったネガティブな感情を爆発させた曲を繋げていく。ただそういった尖ったメロディは次第に色気も出てきて、ルーツの9mmを感じさせた。ラストは『Respiration』の咆哮で締めた。

世界観のある凛黎のサポートベースも務めており、自身のバンドでも強烈なインパクトを残す。希少なベーシスト表現者だ。

④the Kais

この日解散の神戸のスリーピース。最初で最後のライブを見た感想はとにかく上質なスリーピースサウンドだった。「the Kaisの前にするのは緊張する」とLambirisが話していたのも分かる。

たけのり(Vo.Ba)のクリアな歌声、彪雄のエネルギッシュなギター、ミゾグチの波のように雄大で力強く変化するドラム。その3つが重なった時に感じる緊張感と温かみが、上質なロックたる由縁。MCでは「高め合ってきたので嬉しいです。残り3曲やって繋ぎます」と淡々と話すも、さらに推進力を増し、彪雄のシャウトもあって、テンションが上がっていく。
ラスト『海について』は大海に溶けていくような深みのあるサウンドから、最後は激しいフラッシュに合った怒涛の演奏に繋がる。そして、たけのりが「ありがとーー!!」と叫んで、the Kaisは海に還った。

⑤Lambiris

アイムから始まった熱を、主流とは言えない、でも刺さる3組のバンドサウンドで繋いできた。Lambirisの「全員には、届かない音楽を。」というテーマのバンドの大切な日に集まったメンツだからこそ生まれた良い流れ。
サクラギのドラムにまず目を奪われる。1曲目『偽る綺麗、そして皮肉』からリミッターが外れている。そこに付いていくサポートベースのKAは、アイムでもサポートしていたが、その時と人が変わったように激しく弾き倒す。そんな中でも丁寧に言葉を紡ぐ黒崎のボーカルも負けていない存在感。随所随所で前に出ては、フロアから放出されるエネルギーを受け止める。

折り返しのMCでは、そのバンドテーマに触れながら「その中で今日、1人1人の誰かに私たちの音楽が届いていたことが分かって嬉しい」と万感の思いで黒崎は話す。そこからの『Lycoris』『少しだけ』はより感情が乗り、その姿は鬱屈とした闇の中で輝く光。ラストはこの便利さに溢れたSNS社会で死んでいく人の心に対して「この世から感情がなくなりませんように」と話して始まった『残光』。全編を通してキャッチーなPOPや優しいラブソングのような曲はないが、この感情を爆発したバンドサウンドだからこそ生まれるコミュニケーションがフロア1人1人の心を貫いてきた。そしてこの感覚こそ、今必要な感情だと思う。

圧倒した空気で一瞬静寂が生まれた。ただやはり生まれたアンコール。再び3人が登場し、黒崎は涙ながらサクラギの卒業を報告。そして最後は1曲目に披露した『偽る綺麗、そして皮肉』を再度演奏。バンドもフロアも渾身の力でこの曲を楽しみ、Lambirisの第1章は幕を閉じた。

まとめとLambirisから貴方へ

この日に集まったバンドは、恐らく中央のシーンにはいないバンドで、正直あまり流行りとかは興味ないんだろうなとも感じた。
しかし、その分自分達の音楽を追求していて、しっかり感情の深くまで揺れ動く音楽であり、そこにちゃんと気付いている人は少なくない数いることも確認できた。恐らく活動に刺激が足りないバンドやアーティストには刺激となる存在だし、Lambirisもまたこの日を経て、いろんな人に届くことへのモチベーションが高まっているのではないだろうか。

最後にLambirisの黒崎からのコメントで締めます。

第一章で作り上げてきたものを、第二章では更により良く進化させていきます。

メンバーは変わりましたが、根本にある思い、音を通して伝えたいことは変わりません。『全員には、届かない音楽を。』たくさん届けにいくので、ライブや作品を通じて目撃していただきたいです。

Lambiris

ライブレポート:先取り邦ロックの遊津場 https://twitter.com/sakidori_yutuba
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