【ライブレポート】それぞれのスタンスで踊らせ、拳を上げさせた人間臭いハロウィンの夜。Dressy Larvae「舞姫の憧憬」

京都発”踊れる3Kロックバンド”Dressy Larvaeが1st Album『接吻とソリスト』リリースツアー「舞姫の憧憬」のツアーファイナルが10月31日大阪福島2nd LINEで開催された。
3Kとは”キワどく””奇妙な””拗らせ”という3つ。それに違わないクセの強さがありながらも熱狂させるライブが持ち味な彼ら。そんな彼らのファイナルに集まった3組とフロアとで作り上げたライブの様子をレポートする。

photo by まつした りこ

フクスイボンニカエス

1組目は大阪吹田発4人組ポップロックバンド・フクスイボンニカエス。ハードロックなSEで登場し、そのまま熱量の高いロックからスタートするかと思いきや、1曲目はバラード『失くしたもの』。情感たっぷりのそのサウンドは会場の雰囲気を一気に人生を賭けた音楽が鳴る場所に変える。大空(Gt/Cho)のギターは唸り、「消えないでいて」と歌うそうた(Vo/Gt)のボーカルは早くも感動的な空気を出す。

2曲目はクリアで力強く駆け抜けるイントロが。青の照明が似合うこの曲は『To you』。そのイントロのスピード感を失わず、まっすぐなロックサウンドを撃ち放つ。それに呼応して拳を上げるフロア。そのままノンストップで『nightfall』へと繋ぐ。力強さはそのままだが、背中を押し駆け抜ける風のようなメロデイから、ドッシリと内なるエネルギーを引き出すようなまた違ったエネルギーが放出された。フクスイボンニカエスの本格派ながら飽きさせないメロディの巧みさを味わう3曲だった。

MCでは「Dressy Larvaeは元々飲み友なんですけど対バンは初めて。ただ音楽に本気なことは知ってるし、その本気に俺達なりの音楽で本気で返します」と改めて気持ちを込めて「俺たちができること、それは”ロックバンドはいつだって優しい”ということをここにぶつけて帰ります!」という言葉から『H15』をスタート。キラーチューンの1曲であるこの曲にまた一段階会場の温度も上がり、フロアも演者と共に頬を紅潮しながら応えあっているのが印象的だった。そこから廉(Ba/Cho)と青山(Sup.Dr)のリズム隊の重くアスファルトを削るようなビートも印象的な『春忘れ』へ。

「行けるかセカラン!」と煽って、より一層リスナーと共にパワフルさを増していくライブは、彼らの存在証明そのもの。そして「ラスト1曲盛り上がっていけ!」という言葉からラストの『生きる場所』へ。最後は4人全員がリミッターのないステージングを見せて、終了した。

仮装を楽しむハロウィンの夜に、人間の心を丸裸にするライブを見せてトッパーの役割を見事に果たした。彼ら自身も11月12日には同じ2nd LINEにてツアーファイナル公演を行う。さらなるロックを轟かせてくれるはずだ。

<セットリスト>
1.失くしたもの
2.To you
3.nightfall
4.H15
5.春忘れ
6.生きる場所

フクスイボンニカエス ライブ情報

フクスイボンニカエス 会場限定シングルリリースイベント「惜別、そして邂逅」
【DAY】2024.11.12
【Stage】LIVESQUARE2ndLINE
【OPEN/START】18:00 / 18:30
【学生/一般】¥2,000/2400(+1D)
【ACT】 フクスイボンニカエス/ フィラメント / RIPDISHONOR / Komsume
入場順:手売りチケット(フクスイボンニカエスのみ)▶アーティスト取り置き▶当日券

Madam’s

2組目は同じ京都からMadam`s。爆弾ジョニーのSEで登場し、北野(Vo)の「京都から来ました!4人組ロックバンド・Madam’sです!」という言葉から『リフレイン』がスタート。最初から大きな手拍子が起こり、サビでは力強いボーカルに山本(Gt)と中山(Ba)のコーラスも印象的で、ステージでの存在感が右肩上がりに増していく。いつだって終わりと始まりを繰り返すということを歌ったこの曲は”何度でも作り出していこう”というメッセージで終わるのも刺さる。

すぐさま軽快なビートが鳴り出し、最新MVナンバー『満たされた日々』へ。拳も変わらず上がるが、より日常に寄り添った安心感も含むサウンドで、ほのかに雰囲気も和らぐ。山本のギターソロでも魅せるが、斎藤(Dr)の安定感のある演奏も見逃せない。良い歌・演奏を愚直に鳴らす彼らだからこそできる戦い方だ。

「まだまだいく」と3曲目は『涙が溢れて』。感傷さも増した楽曲にフロアも手拍子を鳴らしながら噛み締めるようにこの曲を聴く。Dressy Larvaeの寺町(Ba)もかなり噛み締めているように見えた。悲しみを乗り越えて今あなたが持っている”大切”を真っ直ぐに照らすこの曲はもう他人事ではない。

MCでは感謝を伝え、改めて永遠はないと思っていると北野は話す。それはバンドも音楽も。「それでもあなたの幸せはずっとライブハウスであってほしい。そんな曲を」という言葉から『幸せの在処』へ。あの夕暮れを思い出すようなバラード。バラードではより一層、このバンドのひたむきに伝えていく姿勢が鮮明に感じられた。

「時間もお金もかけて見に来てくれたあなたに僕達ができることは盛大にブチ上げて帰ることです。それが僕達の役目だと思います。正直Dressy Larvaeより盛り上げたい。そのためにはあなたのその拳とその気持ちが必要です。僕達に最後見せてください。僕達もしっかり見せていきます」という決意と共に、ラストナンバー青春ロック『蒼いまま』へ。北野に負けじと山本も中山も前に出るし、斎藤のドラムも今日一番の躍動を見せる。その姿にフロアの後ろまで拳のレーンは途切れなかった。

<セットリスト>
1.リフレイン
2.満たされた日々
3.涙が溢れて
4.幸せの在処
5.蒼いまま

Madam’s ライブ情報

Madam’s pre
1st Mini ALBUM 『戻らない日々を求めて』
Release Tour 2024『ロックなお茶会の幕開け』
【DAY】2024.12.11
【Stage】LIVESQUARE2ndLINE
【OPEN/START】18:00 / 18:30
【Ticket】¥2,000(+1D)
【ACT】 Madam’s / Groggy-Froggy / Too Leap Bunny / フクスイボンニカエス

メルトタイマー

リハーサルからDressy Larvaeの伊藤(Gt/Vo)が飛び跳ねるほど会場を盛り上げた彼ら。ただSEはしっとりとした、まさに”メルト”な雰囲気に包む音楽が流れる。そして耳に届いた瞬間に美しいと思えるのぶ(Gt/Key)のキーボードが鳴り出す中、それに合わせて隼風(Vo)が歌い出し『プラム』がスタート。彼の淀みない歌声と所作が会場の空気を変え、サビの「up down!」の部分ではフロアも息の合った反応を見せる。ギターレスの楽曲だが、しゅん(Ba)、ともひろ(Dr)のリズム隊の演奏も煌びやかに支えており、必要十分の音の強さが満ちていた。

続いて短く口上を述べてから始まったのは『ハーメルン』。幽かなピアノの演奏から徐々に力強いドラムの音が加わっていくのがドラマチック。隼風の歌声だけでなく、吸う息にも思わず耳を傾けてしまう引き込まれる1曲だった。

MCではともひろのハロウィントークで楽しませた後、1年前Dressy Larvaeとの「いつか対バンしたいです!」と言われたという思い出を話す。隼風は1年越しにその約束の舞台を作ってくれたことに感謝し、『ラブメーター』へ。この曲では隼風とのぶがギターに持ち替え鳴らし、そこに歌詞の世界観やサビでフロアが手を横に振る光景も相まって、先ほどのクールさとは違う、ピンクのハートが降り注ぐような甘酸っぱい雰囲気が会場に多幸感をもたらした。

それを良い意味で吹き飛ばすような力強いドラムカウントから疾走感溢れるサウンドから始まった4曲目は『ネイビーガール』。このロックナンバーにフロアも拳で応える。隼風も「いこうぜー!」と叫び、しゅんも前に出て演奏していて、こちらも身を乗り出して聴かなきゃやってられない。

最後の曲の前に隼風は「今日は学生のお客さんが多いと思います。夢持ってる人もいると思うんですけど、夢半ばで諦める人もいると思う。それでも夢あってもなくても明日も生きていかなきゃならないから。それで辛い時、悲しい時、寂しい時が訪れた時、この曲を口ずさんでくれたら嬉しいです」と話し、『アパシー』を送る。言葉の力と力強い隼風のステージング、そして笑顔で演奏する楽器隊3人につられて、会場からもクラップが起こる。MCの言葉通り、辛い時に支えてくれる思い出となる光景を作って、Dressy Larvaeに繋いだ。

<セットリスト>
1.プラム
2.ハーメルン
3.ラブメーター
4.ネイビーガール
5.アパシー

メルトタイマー ライブ情報

メルトタイマー初東名阪ツアー
『無期限浮遊テイク』ツアーファイナル
【DAY】2024.12.11
【Stage】梅田Zeela
【OPEN/START】18:00 / 18:30
【Ticket】一般¥3,000-/学生証提示で¥1,500-(どちらも+1D)
【ACT】 メルトタイマー / 声にならないよ / かたこと

Dressy Larvae 

photo by まつした りこ

「1曲でも多くやりたいので、このままいきます!」という伊藤(Gt/Vo)の言葉から板付のまま始まった1曲目は『淡い炎』。アップテンポなナンバーを気合十分に披露する。それはステージ上で体全身で演奏する伊藤だけでなく、寺町(Ba)と平井(Gt)からも演奏とコーラスから感じて、フロアもそんな主役を拳で迎える。「Dressy Larvaeです」と短く挨拶した後、ミステリアスな高速ギターが鳴り出して『ファム・ファタール』へ。息をつかせず先を読ませないリズムはこの日で最も絡みつくように体に入ってくるナンバー。あすき(Sup.Dr)の力強いドラムもあって、しっかりドレッシー色を出していく。

photo by まつした りこ

感謝を伝えた後「さっき言ったように1曲でも多くやりたいので、MC極力減らしていきます」と伝え、このライブの翌日配信された新曲『No.89』へ。物寂しげさもある中にアーバンな雰囲気をまとったミディアムチューンでしっかり聴かせた。そして間髪入れずに『狼になりたい』へ。優しくもスケールを持って撫でるようなギターとこだわり抜いた歌詞の熱唱によって、先ほどの都市感から雄大な自然の情景へと移り変わる。

photo by まつした りこ
photo by まつした りこ

最後のMCでも伊藤は「ツアーファイナルやけど、やっぱり1曲でも多く届けるのが自分らっぽいと思うので、このまま喋らず残り3曲いきます。ありがとうございました」と伝え、拍手もある中、次の曲『MISTAKE』の低音ベースイントロが鳴り出す。貫通力とノイジーさを兼ね備えたこの楽曲に伊藤もより取り憑かれたように歌い、その気迫に感化されたフロアは曲が進むたびに手が上がる数が増える。そして次の曲の『掌上のソリスト』がまた悪魔的!畳み掛けるマシンガンボーカルとサウンドで完全にゾーンに入った4人。

ドラムソロ、ギターソロありで、伊藤もフラつきながらも「後ろまで完全に顔見えてんぞー!」と叫び、余すことなくダンスフロア、いや全員を操り人形のように支配するフロアを作った。そして「愛してるぞ!」と叫び、ラストナンバーは『ロックンロール イズ 劣等』へ。

伊藤は「2日間のツアーの最後にこの曲を演るという意味が確かにあります。俺の言葉聴いといてくれ」と伝える。”夢は叶わないから諦めたほうがいいよ この歌はそんな歌です でもこの歌に説得力が無くなる日がいつか来ることを望んでいる” そんな絶望と希望が交差する歌詞、そして「何回もバンド辞めようと思ったし、生きるのもしんどくて、明日を生きるのが怖い日ばっかりだけど、それでもこうやって歌っているのは、間違いなく目の前にいるあなたのおかげです!」という言葉によって、バンドとフロアは強く固く繋がった。最後に相応しいエンドロールのようなスケールの演奏を終え、本編は終了した。

ただフロアはもちろんすぐにアンコールを要求。すぐさま出てきた4人。伊藤は「今回のツアーでアルバムの曲全部やるっているコンセプトでやったんで、もう曲が無いのにどうすんねんと思うんですけど…実は明日(11/1)新曲が配信されるんですけど…で、さっき演ったんですけど…実は…もう1曲ありまーす!」と2曲配信をサプライズ発表。
その楽曲『酩酊ナイトクルージング』を披露。様々な楽曲を披露してきたが、やはりこれがドレッシー色だと思わせる、コーラスを活かしながら怪しげに先を読ませない畳み掛けるギターロックを熱唱。最後まで踊らせて、自主企画は終演した。

<セットリスト>
1.淡い炎
2.ファム・ファタール
3.No.89
4.狼になりたい
5.MISTAKE
6.掌上のソリスト
7.ロックンロール イズ 劣等
En.酩酊ナイトクルージング

ある意味今のインディーズシーンでも際立つほど、Dressy Larvaeは音楽に真摯にプライドを持って鳴らすのが印象的だった。そんな彼らが集めた3組もまた自らの選んだスタンスを貫かんとする意志の強さを感じた。京都の同年代の若手バンドシーンの中で、正直まだDressy Larvaeは見つかっていない。ただこのドレッシーの揺るぎないテクニックと意志の強さは濃い。ここからシーンを染め上げていくし、色落ちはしない音楽に期待してほしい。

Dressy Larvae リリース情報

2nd Single 「No.89」配信リンク
https://linkcloud.mu/990b02f1

3rd Single「酩酊ナイトクルージング」配信リンク
https://linkcloud.mu/85d6904e

イベント関係者

カメラマン まつしたりこ
X:https://x.com/ruuun87run?t=kJg0TgBnhLrjohHO464X6A&s=09
Instagram:https://www.instagram.com/ruru87mi/

ライター 遊津場
X:https://x.com/sakidori_yutuba