【新曲レビュー】RYO Weekly Music Selection 6選≪2025/11/12≫

こちらは、私が公式ユーザーを務めるストリーミングサービスの AWAで毎週水曜日に公開される『【邦楽】今週の最新曲』というプレイリストを全曲聞いてオススメの楽曲を紹介しています。

今週は265曲の中からおすすめの6曲を紹介します。ぜひ、新曲と出会うきっかけに。

TOMOO『Lip Noise』

11月12日にリリースされたニューアルバム『DEAR MYSTERIES』に収録された一曲で、サウンドプロデュース・アレンジにはBialystocksの菊池剛を迎えている。繊細でありながらも温もりのある鍵盤の音色と、TOMOOのスモーキーで深みのある歌声が絶妙に溶け合い、聴く人を静かに包み込むような作品だ。

暗い部屋のカーテンを少しずつ開けていくように、楽曲が進むにつれて明るさと光が差し込んでいく。その流れがまるで心の中の解放を表現しているようで、彼女のボーカルのニュアンスもその変化を丁寧に描いている。

1stアルバム『TWO MOON』で見せたポップさやキャッチーさとはまた違い、今作『DEAR MYSTERIES』では、静けさの中に潜む感情の揺らぎや奥行きが印象的だ。TOMOOというアーティストの持つ音楽の引き出しの広さ、そして一つひとつの音や言葉に込められた繊細な美学が詰まった一曲となっている。

Bray me『One Two Three』

2026年1月7日にリリースされる、約2年ぶりのニューアルバム『JUST』からの先行配信曲。ロックサウンド全開で幕を開ける今作は、楽曲そのものから放たれるエネルギーがダイレクトに伝わってくる。

これまでライブにも足を運び、“ライブバンド”としての圧倒的な熱量を体感してきた。強靭なバンドサウンド、突き抜ける歌声、そして心を奮い立たせるメロディ。どこを切り取ってもBray meらしさが詰まっている。

そして、アルバム『JUST』については
“冒頭から完結までリスナーの人生にそっと寄り添い続ける”Bray me節”120%。アーティストとしての大きな進化をまざまざと見せつけるロック・アルバムが堂々完成。”
と語られている。

このコメントの言葉通り、「One Two Three」にはその進化の片鱗がはっきりと刻まれている。これまでのBray meを愛してきた人にとっては胸が熱くなり、新しいBray meに触れる人にとっては鮮烈な第一印象を残す。

アルバムがどんな景色を描いてくれるのか、いまから心から楽しみだ。

SiMA, JunIzawa『Like I Said』

SiMAとJunIzawa(LITE / CONTRASTZ)がクリエイティブに呼応し合いながら生み出した、唯一無二のコラボレーション作品だ。
SiMAが手がけたデモトラックを受け取り、JunIzawaは単にベースを重ねるだけでなく、ヒューマンビートボックスのサウンドをサンプリングして大胆に再構築。原曲の構造を一度ほどき、全く新しいテクスチャーとグルーヴをまとったトラックへと生まれ変わらせた。そのインストに対し、SiMAが新たなメロディと歌を乗せたことで、楽曲はさらに息を吹き返し、二人の創造性が鮮やかに交差する完成形へと辿り着いている。

幾重にも重なるビートとヒューマンビートボックスが独特の世界観を編み上げ、聴くほどにそのレイヤーの深さに引き込まれていく。音が連なるたびに景色が変わるようで、自然と曲の世界へ没入してしまう不思議な感覚がある。
プロフェッショナル同士が互いのアイデアをぶつけ合い、対話しながら作り上げたからこそ生まれた、まさに“このイベントにふさわしい”クリエイティブな一曲だ。

短編画廊『自然回帰』

静けさと壮大さが同じ空間の中で呼吸する一曲。ピアノとギターが繊細に重なるイントロは、まるで夜が明けていく瞬間のように、そっと心をほぐしながら物語の始まりを告げてくれる。音の“余白”を大切にした序盤は、聴く人に考える余裕や深呼吸する時間を与えてくれるようだ。

そこから徐々に音が重なり、後半にかけては短編画廊らしい立体的でダイナミックな広がりが訪れる。静寂から壮大へと移り変わっていく美しい流れは、彼らの作品に共通する“物語性”そのもの。サウンドの起伏が一本の短編映画のように想像力を刺激し、気づけば楽曲の世界に深く入り込んでしまう。

ポップさと文学的な香り、そして爆発力。その三つが自然と同居していて、アーティスティックでありながら初見の人を置いていかない“開かれた個性”が、短編画廊というバンドの魅力を強く感じさせてくれる。

静かに始まり、壮大に広がり、余韻を残して終わる。まさに“自然回帰”というタイトルがしっくりとくる作品だ。

湯冷めラジオ『サリュ』

緋乃白(Vo/Gt)が手がけるソロ・プロジェクト、湯冷めラジオが新曲「サリュ」をリリース。内面に渦巻く感情を、共感を求めるでも突き放すでもなく、ただ“そこにあるもの”として音に描き出す──そんな湯冷めラジオの核心がより鮮明に伝わる一曲だ。

もともとは、中国のSNS「RED(小紅書)」に投稿されたティージング映像が大きな反響を呼び、急遽フル制作が決まったという背景を持つ作品。たった数十秒の断片で聴き手の心をつかみ、フル尺として形になるほどに求められたという事実も、この曲の強さの証だろう。

ゆったりと心をほぐすようなギターのメロディ。その上にそっと置かれた彼女の歌声は、優しさの中にほんの少しの温度差を含んでいて、聴くほどに染み込んでくる。雑踏のSEや生活音のような音たちは、歌詞の世界を補完するのではなく、“一瞬のリアル”をそのまま切り取るように配置されていて、情景が自然と脳裏に立ち上がってくる。

そして、サビの中毒性。穏やかな空気のなかにふいに刺さるそのメロディは、派手さはないのに耳から離れない。湯冷めラジオをこれまでも紹介してきたが、今回の「サリュ」は、またひとつ新しい表情を見せてくれた曲でもある。

静かで、あたたかくて、どこか心の奥に触れてくる。個人的にも好きだと胸を張って言いたくなる、そんな作品だ。


おかえり『ふたば』

福井県福井市発、東京・下北沢を中心に活動するロックバンド・おかえり。今作『ふたば』は、バンド自身が“通学路、夕日に照らされてきらめく小川の水面のように、どこか儚くて夏の匂いがする曲”と語る一曲だ。

ギターのメロディは、真夏の太陽のギラつきだけではなく、その奥に潜むやさしさや切なさまでを丁寧に映し出している。盛り上がりすぎず、かといって弱々しさに寄りかかるわけでもない絶妙な温度感。聴いていると、汗を拭きながら歩いたあの通学路や、部活帰りに見た夕焼けのオレンジ色が、ふっと脳裏に浮かんでくる。

「修学旅行すら行けなかった君へ」というバンドのコンセプトがにじむように、どこか取り残されたような気持ち、でも確かに前に進んでいる感覚、その両方が楽曲のなかに息づいている。

夏のきらめきと青春の残像を、そっと手のひらに乗せるように届けてくれる。そんな作品だ。

AWAプレイリスト 収録

TOMOO『Lip Noise』
STARGLOW『PIECES -STARGLOW Ver.-』
友成空『月のカーニバル』
ねぐせ。『愛の味』
SKY-HI『Success is』
緑黄色社会『さもなくば誰がやる』
Kis-My-Ft2『&Joy』
堂本光一『Thriller City』
IS:SUE『Super Luna』
berry meet『片想いトリップ』
クレナズム『オレンジがひとつ』
Bray me『One Two Three』
Sunny Girl『地球最後の日にも』
カラコルムの山々『戻れメロス』
アルカラ『本能少女A』
SiMA, JunIzawa『Like I Said』
短編画廊『自然回帰』
湯冷めラジオ『サリュ』
ohayoumadayarou『惑星』
スランプガール『アイスクリィムモゥメント』
メとメ『私専用』
アンと私『秘密のスポット』
ポルトギース『今だから話せるみたいなことを』
おかえり『ふたば』
Pale Fruit『渚』
ファジーデイズ『日々割れ』
The Bottomz『愛はどこだっ!!』
フクスイボシニカエス『透明』
ポコメッツ『ちひろチャン』
EVE OF THE LAIN『フラッシュバック・ラブ』

AWAプレイリストはこちら
“【2025/11/12オススメ新曲】RYO Weekly Music Selection” by RYO on AWA
https://mf.awa.fm/3LNM78B