大阪を拠点に活動しているV系ソロプロジェクト「イビツマル」が、9月29日(月)に心斎橋CLAPPERにて当日無料のワンマンライブ『選ばせてくれない セイ/アク』を開催した。
本公演は一度限りの分裂ライブであり、異なるサポートバンドを従え、前後半で全く違う世界観を届ける2部制ワンマンライブ。当日入場無料・投げ銭制となっており、終演後に「あなたの感じた価値」で応援できる投げ銭システムを導入、その結果によってイビツマルが進む道(“セイ”ルート/“アク”ルート)が決定され、ルートに沿った次なるビジュアル、楽曲が公開されるという意欲的な取組だった。
そのライブレポが本メディアに届いたので、掲載する。公式Xにはダイジェスト動画もアップされている。
【ライブレポート】「選ばせてくれない セイ/アク」2025年9月29日@心斎橋CLAPPER

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心斎橋CLAPPERに集まった観客が目撃したのは、ただのライブではなかった。そこにあったのは、イビツ マルが自らの存在を二分し、観客の心に選択を迫る“人格分断ショー”。「白きセイは、救い」「赤きアクは、狂気」――冒頭の禍々しいアナウンスが告げた言葉どおり、二つの人格が同じステージに交互に現れ、フロアを翻弄していった。
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■第一部「セイ」

白を基調とした衣装に身を包み、軽やかな笑みを浮かべた“セイのイビツ マル”がまずは登場。「○んじゃうからね★」の教育番組風ポップチューンで場内を和ませると、「私はコンカフェ嬢」でキャッチーなメロディー観客の体を揺らし、続く「偶像崇拝視姦女子」で一気にボルテージを引き上げた。
MCを経て届けられた「放課後チャプター」では、イビツ マル本人が「自身の実体験を投影した歌詞」と述べ、静かに観客の胸に刺さる。さらに「アナタの『生きろ』の言葉は、私に向けられたものじゃないらしい。」では、フロアからすすり泣きが聞こえるほどの感情の共有が生まれた。
“セイ”のセットリストは確かに楽しくキャッチーであったが、そこに混ざる痛みと儚さ、「居場所になってやる」とイビツ マルが提示する“救い”の輪郭を鮮明に描き出していた。
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■第二部「アク」

再び照明が落ちると、暗闇から現れたのは衣装もメイクも一変させた“アクのイビツ マル”。先ほどの白い輝きとは対照的な、妖艶で狂気を孕んだ姿だ。
幕開けを飾った「ヒスってファンレターを燃やした」はメタル色の強いアグレッシブな一曲。鋭いサウンドと鬼気迫る歌声に、フロアの空気は一気に張り詰める。続く「欲求不満」では〈愛されたい〉の連呼が異様な熱を帯び、観客の心をざわつかせた。
そして「禁中貴方ニ絶対服従」。これはイビツ マルを語る上で欠かせないキラーチューンと言ってもいいだろう。圧倒的なカリスマ性を放ちながら、支配と服従のテーマを観客へ突きつけるその姿に、フロアは完全に飲み込まれていく。
さらに「堕愛堕愛リグレット」、そしてラスト「ペルソナロボトミー」へ。リリックビデオに映し出された少女は、まるでイビツ マルのファン=イビトを象徴するかのよう。観客一人ひとりが映像と歌詞に自分を重ね、舞台と客席の境界は次第に曖昧になっていった。
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セイとアク――“救い”と“狂気”という相反する二つの側面を、ひとつの身体から切り出し、観客に突きつけたイビツ マル。その姿はもはや単なるシンガーではなく、観客を巻き込む実験者であり、同時に苦しみを背負う被験者でもあった。
この日集まった人々に残された問いはただ一つ。〈どちらの人格を分断させるのか〉。だが、観客の心に刻まれたのは、二つに裂かれながらもなおイビツ マルという存在が確かに生きている、という強烈な実感だったに違いない。
今後のスケジュール
イビツ マル 1st EPリリース&東京大阪主催ツアー開催決定
◆1/13(火)@心斎橋soma
◆1/16(金)@巣鴨獅子王
※詳細後日解禁